■マコの傷跡■

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chapter 17



~ chapter 17 “家出” ~



ある日、父が足を痛めて入院する事になった。
「病院に行ったら即入院だと言われたから入院に必要な物を持ってきてくれないか。」
父から連絡をもらった時、私が考えたのは兄の事だった。

お父さんが帰って来なくなる。兄と、この家で2人だけになる。
中学1年の時を最後に手を出される事はなくなったが叩かれたり蹴られたりはしていた。
父が居ない家で何をされるかわからないと思った。

父の入院道具をカバンに詰めた後、私は自分の荷物もカバンに詰めた。
簡単な着替えと、学校に行く用意全部。
制服を着て、父の病院に荷物を持って行ったその足で私は家出をした。
父の入院はひと月くらいだと聞いた。
その間、家には帰れない。私は友達の家に逃げた。

学校の道具は全部学校のロッカーにしまい、
着替えだけを持って毎日友達の家に泊まる。
最初は1番仲のいい友達の家に居た。
「ずっと居てもいいよ」と友達は言ってくれたけど
学校でも家でも毎日一緒に居る事になった友達は
数日経つと自分だけの時間が持てず窮屈そうに見えた。

一週間経った頃、これ以上ここには居られないと思った。
友達との距離も心配だったし、彼女の親もさすがに
「帰らなくて大丈夫なの?」と聞いてきた。
友達をなくすのだけは避けなければいけない。
翌日からは違う友達の家に日替わりで泊まった。
毎日学校で「今日泊まりに行ってもいい?」と泊めてくれる友達を探す。

三週間が経った頃、泊まりに行ける友達も尽きた。
それに、毎日泊まる場所を探すのにも疲れてしまっていた。
翌日から母の家に泊まった。
母は離婚した直後、男と別れていた。男は自分の家庭に戻ったのだった。
“このまま母と一緒にここに住んでしまおうか・・・。“

母と暮らし始めて数日後、母にこう聞いてみた。
「私がこのままお母さんと暮らしたら、お父さんは学費とかを、もう払ってくれないと思う?」
「それはそうでしょうね」とだけ、母が答えた。
どうしたらいいのかわからなくなった。

四週間が経った頃、母が
「あさって、お父さん退院するからあんた家に帰りなさいよ」と言ってきた。
父の退院の時に兄は病院に行くだろうか。
兄は車に乗れるから、荷物を運ぶにも兄が行くのなら私は行かなくてもいいだろう。
兄と顔を合わせるのは嫌だった。
兄が行かないのなら、私が病院まで行くつもりだった。


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